2024/02/01 18:42

2つに分かれた記事の2つ目です。

今回は、前回の記事に引き続いて香りのノートのお話です。
ご紹介するのは、「香料の揮発速度」を表現するノートについて。

待て待て、ノートってなんだよ!という方は、前回の記事でご説明しているので、先にそちらから読んでみてくださいねー!


香料の揮発速度を表現するノート

香料の揮発速度を表現するノートはずばり、トップノート・ミドルノート・ベースノートの3つです。

今回はこの3つについて詳しく見ていきましょう!


その前に…揮発と嗅覚の関係について知っておく必要があるので、先に解説させてください。

普段、皆さまが手に取る香りアイテムには、通常は数種類から数十種類もの香り成分が入っています。

そして、その香り成分たちは時間とともに揮発し、小さな粒子となって空気中に浮遊します。


その粒子が私たちの鼻まで届くことによって、初めて香りを認識することができる、というのが揮発と嗅覚の関係です。

つまり、揮発と嗅覚はセットであると言えるわけです。


ただ、世の中の香り成分たちはひとつひとつ揮発速度が異なり、同じ香りアイテム内にも揮発速度の異なる香り成分がいくつも配合されています。


さて、ここまで読んで、勘の鋭い方はハッとなったかと思います。


そうです、一つの香水や芳香剤でも、異なる揮発速度の香り成分が含まれていれば、嗅ぐタイミングによって香りが変化してしまうのです。


これが、店頭サンプルと購入後の「なんか違う…」となるギャップの原因だというわけですね。


そんな悲しい事態を避けるために登場するのが、今回ご紹介するトップノート・ミドルノート・ベースノートです。

これらはまさに、直接嗅ぐという行為をしなくても、香りの移り変わりを捉えることができるように、と生まれた言葉です。


香りの世界では、各香料を揮発速度が早い順にトップノート・ミドルノート・ベースノートと分類します。

そうすることで、どの香料がどのタイミングで香るのかを事前に確認でき、今は感じることのできない香りについてもイメージができるようになります。


それでは、それぞれのノートの特徴と、香水を使用する際の持続時間を例として簡単にまとめておきます。

トップノート
香水をつけてから5分~15分程度で揮発するものをトップノートと呼びます。
香りの第一印象を決める部分であり、柑橘系やハーブのように爽やかな香りが多いのが特徴です。
お店で香水を嗅ぐ時は、基本的にこの部分が強く出ていることが多いです。

ミドルノート
香水をつけてから30分~3,4時間程度で揮発するものをミドルノートと呼びます。
香りの中で一番長く香るため、香りの核という意味でハートノートとも呼ばれます。
お花の香りなど華やかな印象のものが多く、実際に香水を身に着けた際はこの部分が最も長く香ります。

ベースノート
香水をつけてから3,4時間~半日程度で揮発するものをベースノートと呼びます。
最後の香りであるためラストノートと呼ぶことも多く、甘い香りやくすんだ香りなど、他のノートよりもバリエーションがあるのが特徴です。
時間が経過したあとの、いわゆる残り香(ドライアウト)はこの部分です。
また、芳香剤などの店頭サンプルは時間が経過していて、この部分が強く出ていることが多いように感じます。

また、時間の流れとそれぞれの香り方としては、下図のようなイメージです。
それぞれのノートが重なりながら、香りが少しずつ変化していくのが分かります。

このノートは香水だけでなく芳香剤や柔軟剤、入浴剤など、香料が複数入っている製品には必ず存在しています。

先ほども書きましたが、慣れてくるとこのノートを知っているおかげで、今は感じられない香りをイメージすることができるようになってきます。
具体的には、入っている香り成分とその揮発速度を確認する、という活用方法をおすすめします。

例えば、店頭で香水を試すと柑橘系の香りがしたとします。
その際、んー柑橘系は別にそこまで好きじゃないなぁ、と感じれば購入しませんよね。
ですが、その香水はベースノートにローズを使用しているという説明があり、あなたはローズの香りが大好きだとします。

柑橘系はトップノートの代表格とされる香りです。
ノートについて知識があれば、柑橘系が少しずつ落ち着き、数時間後にはローズの香りがふんわりと漂ってくる香水だと想像できるようになるのです。

今まではその瞬間、すなわち点でしか見れなかった香りを、線や面、もう少し慣れてくると全体のストーリーとして捉えることができるようになります。
そうなると、今香ってくる柑橘系とローズの相性についても興味が湧き、なんとも思わなかった柑橘系にも魅力を感じたりします。
少し大袈裟な表現かもしれませんが、トップ・ミドル・ベースノートという認識があるだけで、香りを多面的に吟味することが可能になります。

※どの香料がトップノート・ミドルノート・ベースノートのどこに分類されるかについては、話が長くなってしまうのでまた別の記事で説明しますね!


まとめ
今回はノートの2つ目、「香料の揮発速度」を表現するノートについて解説しました!
香りを愉しむためには必要不可欠な、揮発速度の指標となるこの2つ目のノート。

慣れてくると、今は感じることのできない香りをイメージできるようになってきます。
まずは、自分の好きな香料がどのノートに入っているのか確認してみるところから始めてみてください!

また、香りが少しずつ変化するものであるということを知っておけば、より様々な香りの愉しみ方ができるようになります。
香り選びでは香りを嗅ぐだけでなく、パッケージの裏側にも目を通してみるのがおすすめだと言えますね。


さて、前回から合わせて2つの記事にて、香りのノートについて詳しく解説してきました!

いかがだったでしょうか。

香りは「生き物」だとよく言われます。
香りの系統や揮発速度による違いを、その日の気分や環境に合わせて楽しむことができるのが醍醐味です。

そのためにも、香りのノートについての知識を蓄えていくと、少しずつ目の前に香りがなくとも香りをイメージできるようになってきます。
そうすれば、今まで感じなかった香りの側面に気付くことができ、もっと香りに興味が出てくるはず。

長い記事になってしまいましたが、ぜひ香りの基礎知識として覚えておいていただき、少しでも皆さまの香り選びが愉しい時間になれば幸いです。